2023.03.09
キャニオンスパイス物語 第2部 (マサランちゃん誕生編)
★今日のマサランちゃん
少しずつ注文がもらえるようになったマサランショップ。
今日もマサランちゃんは頑張って仕事を、、、、、
あっ!!寝てる(汗
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
★事業承継
今から約二十数年前、現社長の「辻田 誉」が20代前半の若さであるにも関わらず株式会社キャニオンスパイス社長に就任しました。その時に、創業者である父親と、現社長の間で下のようなやり取りがあったと聞いています。
現社長「親父、会社くれ!」
創業者「やるわ」
文字にすると、何とも適当なやり取りに見えますが、若くして創業者精神の何たるかを会得した我が子に熱いものを感じたに違いありません。(著者の空想です)
会社を譲った創業者は会社には籍を置かず、完全に会社のすべてを渡しました。しかしながら、本心では心配で仕方がなかったのでしょう。たまに会社の花に水をやりに来る振りをしながら、遠目に息子たちの様子を見守っていたそうです。
しばらくして、会社を創業の地である大阪市平野区から、大阪府泉南市へ引っ越し。(現)第一工場の稼働が始まったのでした。
そうして父親が育てた事業を守り、成長させながらも、「未来の為に何かを自分にしか出来ない、世の為になる事業を作らなければならない」と、静かだけど熱い炎を心中に燃やしていました。
★「こどものための」というキーワード
現社長は、幼い頃身体が弱くアトピーを患っていたため食事の制限があり、好きなものを食べられなかったので、子供達には出来るだけそういう思いをして欲しくないと考えていました。事業承継をする前に、食の勉強のために栄養士の学校に通っていたのですが、そのような原因の多くは食品添加物に由来することが多いことを学んでいました。
市場を見ると、自分達が生業にしている「加工食品」という分野は、鮮度・品質保持や不自然なほどの旨味を出すために、様々な食品添加物が用いられていました。カレールウは、その中でも添加物のデパートと呼ばれるぐらいに、多くの食品添加物が使われているジャンルでした。
ある日ふと気づいたのが、自分たちの工場には、市販品に記載されている食品添加物の量に比べて、明らかに種類や量が少なかったのです。
「食品添加物を減らそう」
と、わざわざ考える必要はなく、
「美味しいものを作るのに、わざわざ食品添加物を使用する必要が無い」
という事に気付いたのです。
そしてその延長で、「こどもたちのために安心して食べられるカレールウを作る」という、新たな取り組み、研究開発を始めていくことになるのです。
開発は難航しましたが、多くの子供達に食べてもらい、みんなが美味しいと言ってくれる、他のカレーが食べられなかった子が「美味しい」と言ってくれる、それに加えて多くの大人たちが「コレ、すごく美味しい!」と言ってくれる、今やキャニオンスパイスの代名詞「こどものためのカレールウ。」の味が完成したのです。
★産声を上げるマサランちゃん
コンセプトと味が完成したら、「さあ発売!!」とすぐに行けないのが加工食品。パッケージも先に書いた2つと同じくらい大事な要素になるのです。
当時、カレールウを含む加工食品全般にとって、パッケージで出来上がりのイメージを伝えるのが当たり前でした。おそらく今もほとんどの商品がそうだと思います。
しかし、現社長は最初からパッケージはイラストにすると決めていました。それもカレーではなく、それを食べる方のこどものイラスト。
そこで紙とペンを取り出し、意気揚々と子供のイラストを描き上げたのですが、これがあまりにも可愛くなく、発売を諦めようかというほどに挫折したそうです。
そこで、たまたま絵描きさんの友達(ガードナー瑞穂さん)がいたので藁にもすがる思いで頼んでみたところ、パッケージの女の子でありこのマサランショップの店長である「マサランちゃん」がこの世に誕生したのです。
頬杖をつきながら、スプーンを前にワクワクとカレーを待つ女の子。
「いつ見ても癒される」
「すごく可愛くてお洒落」
「部屋に置いときたい」
よくこのように言っていただけます。
しかし、発売当初は実はまったく理解されなかったのです。
★がんばれマサランちゃん、がんばれキャニオンスパイス
完成した「こどものためのカレールウ。」を持って、いろんなお店に並べてもらうべく各地に営業に行くのですが、どこに行っても口を揃えて、
「えっ!?これ、カレーなの?」
「何かわからないのに店に並べられないよ」
食べてもらう以前に、パッケージの段階で話にならないという声がほとんどだったのです。
声高に出陣したキャニオンスパイスのメンバーも、1ヶ月も立てば意気消沈し、表面上は取り繕っていましたが、足元はフラフラでした。特に現社長は発案・開発・デザインまで全て指揮を執っただけに、その心のダメージは計り知れないものでした。
気を取り直して、OEM(お客さんのオリジナルカレーを作る)事業の方に注力し、いつしかみんなの頭の中のマサランちゃんに霧がかかっていきました。そうしてから何年も経つ間に、少しずつ(×2)「こどものためのカレールウ。」の問い合わせが増えてきたのです。
気付けば、「あ、このお店にマサランちゃんが」、「こっちのお店にも」と自分達が把握していないのに、マサランちゃんが先回りしてかくれんぼをしているように、あちこちのお店の棚に潜んでいるのでした。
そして、大手のベビー用品チェーンで採用されるようになった頃には、キャニオンスパイスは完全にマサランちゃんに置いていかれて、縦横無尽に遊びまわるその跡をただただ必死で追いかけるようになったのです。
~つづく~